Any Time Feel Easy*

蒼い月*

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それは、月明かりどころか星も見えない暗闇の夜。
珍しく早くにベットに入り、スタンドスイッチを入れ本を広げた。

片手間に読みたくないので
今日まで一ページも開かなかったほど、読みたかった本。
読み始めて、やはり思ったとおり
面白い。 こんな風にストーリーが始まるなんて・・・
と読みたい気は逸るのだが、ここ最近の寝不足を思い知らされる。
何度も本が手から落ちそうになる、瞼が心地よく重くなり力が抜けてゆく・・・


部屋の中が妙に明るく、目が覚めた。
切り忘れたスタンドのスイッチをoffにした
しかし、ベット周りが妙に明るい。
いつもと違う部屋の明るさ・・・
ふと目線を上げると窓から月明かりが差し込んでいた。

月か・・・。

特に天体に興味もなく、子供の頃から月に対して特別な感情は全くなかった
しかし、あの頃から月を見ては切なく、そして美しいと感じるようになった。


それは二人目の子供を産んで、それまで当たり前のように
家族みんな暮らせる日が、遠い昔の事のように思えるようになった頃。


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毎日夕方からお見舞いに来てくれる母に勧められて外の空気を吸いに出た。
外と言っても病院の屋上。

街はずれと言っても、やっぱ都会
暮らしている小さな町の
星が瞬き地面と空がつながったような夜ではない。

空は明るく、遠くのネオンの灯りで空全体が異様に明るい
響くバイクや車の音や、夜の生ぬるい風に
気が一層滅入りそうになった。

私たちが暮らしている田舎とは全く違う。
田舎の夜空は黒い。 降り注いできそうなほどの無数の星がちかちかと瞬く。

等間隔で心細いくらい間を置いて立っている、小さな小さな薄暗い街灯がついている
そう、月明かりがある日の方が断然明るい歩道。 

ふと、今いる場所が分からなくなる。

どうしてここにいるんだろう・・・。
一体どうして
どうして家族で暮らせないんだろう。
一体いつ終わるんだろう・・・


私たちが選ばれた理由は何なんだろう・・・。


空を見上げると、その夜は小さな月が浮かんでいた。


涙が止まらなくなった。

あなたが見るこの月も、おとうさんが見ているこの月も
おかあさんが見ているこの月も・・・同じ月なんだよね。

みんな遠く離れ離れ・・・のような気がしてたけど 
同じ月をみているんだね。
だから頑張ろうね。 がんばってね
離れていてもみんな一緒に頑張ろうね

月に心の中で話しかける。

ちいさなちいさなあなただけど
あなたが少しでも寂しさを感じませんように・・・

それが月へのお願いの始まりだった。

あなたと言うのは一歳半になったばかりの長女の事。

その日から、母が見舞いに来てくれるたび
よく屋上に行って月を見た。

病室では、産まれたばかりの小さな体で戦っている
息子から目が離せない。
吸引、吸入、ミルクなどを24時間の間3時間のサイクルでするのだけど
ひとつひとつに時間がかかっていたのか、そんなに時間がやはりかかるものなのか
今となってはあまり分からないのだけど、とにかく冗談抜きで
今思えば信じられないほど、寝れない日々は続いた。

体はどんどんなれて、くたびれるどころか
ほんと短い時間で熟睡し、睡眠時間はびっくりするほどなくても
寝不足をすぐに意識しないほどになった。

一日の中で楽しみは、母と長女が一緒に病院に来てくれる事。

長女は最初の頃は、私と離れる時は泣いていた。
でも、私の母が
「ひかちゃんが元気になるまでお母さん頑張るから
さらちゃんも頑張ろうね。 」 と言ったらその次にひからは
目と鼻を真っ赤にしながらも、涙を出さないでばいばいするようになった。

まだ、一歳と6ヶ月。 

けなげな長女の姿を見て
私は泣きごとは言ってはいけないな…と思った。
あんなに小さな私にべったりだった娘が、お母さんが最も必要なんじゃないかと
思われる時期に、離れ離れでも頑張っているのだから・・・。

夫も、可愛くて仕方ない娘と、突然遠く離れ暮らす事になり
きっと寂しいだろうなー。

そして一番に、目の前にいる子の子は
産まれたその日に手術をし、日々吸引・吸入、点滴、採血などをしているだけではなく
これからも幾度となく手術をしたり、辛い治療も始まる事が分っていたので
本当にかわいそうで、もうしわけなくて。

あー私は絶対に泣きごとなんか言っちゃいけない。 と思いました。

泣きごとは言わない。 そう思っていた私ですが
でも、その屋上で月を見上げる時間だけは
長女の事や夫の事を正直恋しく思い
そして、誰にもぶつけられない張り裂けそうな嘆きを
胸の中で叫んだものです。

いったいどうして私たちなの? どうしてあの子がこんなに痛い苦しい思いをしなくてはいけないの
どうして小さな長女が親と離れて暮らさないといけないの
どうして?どうして?どうして?? 

思っても仕方ない事をひとしきり思うのです。
そうしたら、心が急に穏やかになってくるのです。

そう、みんな頑張っているのだから。



心静かに
  月に願う

「 どうかお願いです。 あの子を助けて下さい
  平凡でいいのです。 いえ、つつましくて構わない
  家族みんなが 一つ同じ屋根の下に暮らせる日が
  一日も早く来ますように。
  贅沢など一切要らないのです。
  
  ただ、ただ家族みんなで元気に暮らせたら
  何も要りません。 」

時には

「 まるで元気じゃなくても良い
家族みんなで暮らせるほど元気になる程度でもいいです。
あの子を助けて下さい
家に帰りたい。 みんなで暮らしたい。
どうして私たちなのですか? 私がいけなかったのですね
どこでどう悪く、どこでどうしておけばあの子はこんなに苦しまなくて済んだのですか?
娘だって本当にかわいそう・・・もう限界
一体いつになれば終わるのですかこんな日々が・・・
家族で暮らせるようにしてください。 人の為になる生き方を心がけますから・・・。 」


家族ひとつ屋根の下に暮らすことにどれだけ心焦がれたか。


今思えば
の頃が懐かしいような気もする。

時には、本当にそんな時があったのかと思えるほど
今の生活とかけ離れた時間だった。

あの頃月に願った。

願いはかなったのか、家族ひとつ同じ屋根の下に暮らし
そして、それ以上の生活を送っている。

月は、願いをかなえてくれたのでしょうか・・・
ならば、人の為に生きる と言う事を実行しなくてはならない。
しかし、人の為に…と言うのは何ともおこがましい事を誓ってしまったのでしょう
人の為になる生き方と言うのは、いったいどんな生き方なのでしょう。

あの頃の切ない思いがよみがえる
家族で過ごせる一瞬の時間をどれだけ幸せに感じ
かみしめるように過ごしたか。
どれだけその短い時間に感謝したか・・・

私たちは、いまあの頃の感動を感じる事は出来ないでしょう
それぐらい、当たり前のように家族で過ごせるようになりました。

部屋の中まで差し込む、蒼い月明かりがまぶしくて
目を閉じる


続くかも・・・

(物忘れが加速する前に書きました^^;)
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by sarajya2 | 2011-02-04 23:38